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マンガ大好きユキチです。
今回は、陸上短距離100mに挑戦する若者達の青春を描いた、小山ゆうさんの漫画『スプリンター』を、ご紹介させて頂きます。
陸上競技、特に100mの短距離走の漫画は非常に少ないです。10秒前後の一瞬の輝きのために、地道な努力を永遠と続ける。競い合っている時間は一瞬ですので、漫画にしにくい題材かもしれません。
そんなスプリンターの世界を、面白く描き切っている小山ゆうさんは、さすがです。
1.『スプリンター』の基本情報
著者 | 小山ゆう |
出版社 | 小学館 |
連載雑誌 | 週刊少年サンデー |
掲載期間 | 1984年~1987年 |
巻数 | 全14巻 |
小山ゆうさんは1948年生まれ、1973年デビューですから超ベテランの漫画家さんです。70歳を超えた今でも、連載を続けているすごい人です。
代表作は、デビュー作の『おれは直角』から、『がんばれ元気』『お~い!竜馬』『あずみ』など、多くの面白い漫画を描いていますが、画風は昔から、ほとんど変わっていない感じです。よく見ると、みんな同じ顔をしています…(笑)。
2.『スプリンター』のあらすじ
日本有数の大企業・結城グループ。その総師・結城豪太郎は、結城グループの後継ぎ達を、血のつながりなどは関係なく、自分の足で探し出して養子にして帝王学を教えています。
主人公・結城光も、人を引き付ける魅力を豪太郎に見込まれて、3歳で引き取られてから、帝王学を叩き込まれ現在16歳です。
そんな豪太郎と息子達のもとに、豪太郎の娘を名乗る水沢裕子(16歳)がやってきます。裕子の母が3日前に亡くなり、母一人で育てられてきた裕子は、母が死ぬ直前に、豪太郎が父親であると聞かされたということです。
豪太郎から一緒に暮らすように言われた裕子ですが、父親の援助は遠慮し、一人で生きていけると言います。裕子は陸上短距離100mの女子ナンバーワン・スプリンターで、特待生として高校生活を続けられるというのです。
まったく違う青春を選んだ、光と裕子ですが、意地を張りあいつつも、互いにひかれ合い、光も100m走の魅力に取りつかれていきます。
3.企業経営とスプリンターの選択で葛藤
光は、結城グループの土地開発など、大企業の経営に魅力を感じており、父・豪太郎が、光に多大な期待を抱いていることも知っています。
初めは、短距離100m走の世界にまったく魅力を感じていなかった光が、その一瞬の世界に、引き込まれていく過程が面白いです。実は、結城グループも盤石ではなく・・・と、なかなか光を100m走に、のめり込めさせてくれない展開です。
4.100mで9秒の先にある領域
日本記録に破った裕子は、さらにその先、世界と戦えるスプリンターになるため、科学的トレーニングで自分を追い込みます。しかし、フィジカルに勝る外国の選手達にまったく敵わないのですが、走っている時に、”その先の世界”の存在を感じるのでした。
現代では、トップアスリートが語る、超集中状態を、”ゾーン”に入る。などというのですが、そんな状態を、この『スプリンター』では、その先の世界、”神の領域”と言っています。
体格、フィジカルに劣る日本人が、野獣並みの運動神経を持つ外国人選手に勝つため、9秒台の壁を突破するため、”神の領域”に入る。しかし、その代償は大きく・・・と、結構、科学的に書かれているところも面白いです。
5.まとめ
結城グループの経営、父親の期待、裕子との恋、100mのライバル達との勝負。この全てを受け止める光はどうなってしまうのか?
気合と根性のスポーツ漫画とは一味違います。”神の領域”を覗いてみたい方は、ぜひ読んでみてください。